ちーちゃんとく−ちゃん 2/3
「もう、幼稚園に行かない! ヒロくん、キライ! もう、くーちゃんだけでいいっ!」
ちーちゃんが半分泣きながら、パパとママに言ってた。
また、ヒロくんにいじわるを言われたらしい。
「パパ思うんだけどさ、ヒロくんってちーちゃんの事が好きなんだよ。だから、いじわるしちゃうんじゃないかな?」
「どうして好きなのにいじわるするの?」
ボクもそれってヘンだと思う。
好きだから、仲良くしたいんじゃないのかなぁ。
「ちーちゃんは、なっちゃんとか女の子と遊ぶだろ?本当はヒロくんも一緒に遊びたいけど、女の子の中に男の子が 一人で入っていくってなかなかできないんだよ。一緒に遊ぼうって言うのが恥ずかしくて、逆にいじわるしちゃうんだと思うな。 パパも昔、好きな女の子にいじわるしたもんなぁ」
「いじわるする人はキライ!パパもママにいじわるしたんでしょ?じゃ、パパもキライ」
「いや、ママじゃなくて・・・」
「パパの好きな女の子ってママじゃないの?」
「あ・・・うん、ママ。そう、ママだよ」
ママは一人で下を向いて笑っていた。
すきだからいじわるをするっていうパパの話も、ママが一人で笑っている事もどうしてなのかボクには、わけがわからなかった。

ちーちゃんがぐっすり眠ったのを確認して、ボクはカーテンと窓を少し開けて空を見た。
「お月様、お月様。どうかちーちゃんがみんなと仲良くできますように。ちーちゃんにお友達がいっぱいできますように」
ボクがお月様にお願い事をすると空から何かキラキラするものが降ってきた。
「ちょっと、聞こえたわよ」
「君たち、誰?」
「私たちは、星の子よ。そんな事より、あなた今、何言った?」
「ちーちゃんがみんなと仲良くできて、お友達がいっぱいできるようにってお月様にお願いしただけだよ」
「わかってるわよ。だから、さっき聞こえたって言ったじゃない、ねー」
「うん。聞こえた、聞こえた」
「それがどうかしたの?」
ボクは、少しムスッとして言った。
「どうしたのですって。聞こえた?」
「うん。聞こえた、聞こえた」
「だから、何だって言うの?」
「あなたね、自分の言ってる事がどういう事なのか本当にわかってるの?」
「どういう意味?」
「ちーちゃんってそこで寝てる女の子でしょ?その子にたくさんお友達ができたらどうなるかわかってるの?」
「だから、どういう意味なの?」
「あきれた。人間がね、いくらお気に入りのおもちゃを大事にしてたって、所詮おもちゃはおもちゃ、ぬいぐるみはぬいぐるみなの。 人間同士の友達ができて、あきられて捨てられちゃったおもちゃたちを私たちいっぱい見たもん、ねー」
「見たもん、見たもん」
「・・・ちーちゃんは、そんな事ないよ・・・」
「どうしてそんな事ないって言えるの? あなたその子としゃべれるって言うの?」
「・・・しゃべれないけど・・・」
「でしょう。人間たちなんて、新しい物を買ってもらったら、すぐに古いおもちゃなんて捨てちゃうのよ。ひどいよね」
「うん、ひどい、ひどい」
「ボクも捨てられちゃうって事?」
「そうなるかもしれないわね。だから、そんなお願い事なんてしなくていいのよ。ねー」
「うん。そうそう」
「こら、もうおやめなさい」
「あ、お月様!」
「おもちゃたちがすべて捨てられるわけではないでしょう」
「そうかなぁ? だって、捨てられちゃったおもちゃたちを私たちいっぱい見たもんねー」
「ねー」
「お月様、ちーちゃんにお友達がいっぱいできたら、ボクは捨てられちゃうの?」
「どうしてそう思うの?」
「・・・わからないけど」
「私にもどうなるかはわかりません。だけど、あなたがそのちーちゃんを大切に思うならば、ちーちゃんにも あなたの気持ちが伝わるでしょう。私はそう信じたい」
「うん。ボクもちーちゃんを信じます」
「そうしましょう。さぁ、夜も遅いですからもうおやすみなさい」
「はい。お月様、ありがとう」
「いいえ。私もあなたのような子に逢えて、とても優しい気持ちになれました。こちらこそ、ありがとう」
「私たちも・・・・さっきは、ごめんね」
「ううん。もう気にしてないよ」
「ありがとう。じゃ、おやすみなさい」
「お月様、星の子さんたち、おやすみなさい」
窓とカーテンを静かに閉じ、ボクはそっとちーちゃんのお布団の中に入った。

 

 

 

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