ハッピーバースデイ 今年も小町のお誕生日が来たね。
私は小町の本当の誕生日を知らないので、ペットショップから私の所に来た6月1日を小町の誕生日にしました。
これを書いている今、改めて小町の事を一つ一つ思い出しています。
玄関を開けると必ず出迎えてくれた事、お風呂がキライでいつもバスマットの上で座って待っていてくれた事、寝返りをうって、寝た時とは反対側を向いて起きても
必ず私の顔のある方にいた事、プリンが大好きだった事・・・・・
小町とのすべては愛しく、あたたかなものばかりでした。
あの日の夜もいつもと同じように玄関を開けたのに小町の姿はなく、名前を呼ぶとどこからか弱々しい小町の声が聞こえてきました。
吐いたら私に叱られると思ったのでしょうか、小町はTV台の後ろで食べた物を戻して倒れていました。
抱き上げると小さな声で鳴く小町の体はだらんとしていました。
診察時間などとうに終わっているのも気にせず、私は近所の動物病院に電話を入れすぐに診て欲しいと頼み、小町をバスタオルにくるんで病院へ急ぎました。
診察台に寝かせられ、先生に足を強く押されても耳を少し動かす程度で痛みへの反応が薄くなっている小町は不安そうに私の顔を見つめていました。
こうなる兆候はなかったのですか?という先生の問いに、私は自分の至らなさに泣く事しかできませんでした。
最近よく寝るなぁとしか私は思っておらず、なぜ仔猫なのに走り回ったりしないのかという事を真剣には考えていなかったのです。
先天性かどうかはわからないけれど、小町は脳神経の病気との事でした。
先生ははっきりとは言わなかったけれど、小町に残った時間は無いに等しいという事でした。
その日は入院という事になり、翌日私は仕事場から1,2時間おきに病院に電話をいれ、小町の様子を聞いていました。
先生もさぞかし迷惑だったでしょうね。
仕事を定時に終わらせ、私は病院に急ぎました。
小町は朝から薬と栄養剤の注射だけで、食べ物を口に運んでも食べようとはしなかったそうです。
入院用のゲージから先生に抱かれてきた小町は、か細い声で鳴き私の許へ来ようと必死になっていました。
でも、もう小町の体は小町の意志では動かす事ができないのです。
連れて帰ってもいいですか?という私に、先生は、その方がいいでしょうと静かに答えてくれました。
小町、おうちに帰ろうね、と声を掛けると小さな声で返事をしてくれたよね。
病院に連れて来た時と同じようにバスタオルに小町をくるみ、私は人目も気にせず泣きながら、小町には泣き笑いの顔を見せながら帰ってきました。
ソファに寝かせた小町に、ちょっとだけでもゴハン食べようねとスプーンでキャットフードをあげると少しだけ食べてくれました。
病院では何も食べようとはしなかったというのに。
しばらくして、小町が鳴くのでどうしたの?と足の方を見ると、バスタオルにおもらしをしていました。
こんな体になってもそんな事を気にするなんて。
バカね、小町。そんな事で怒るわけないでしょ?
虚ろな目、時々少しだけ動く耳、呼吸する度に上下するお腹。
小町が生きている証拠は、これだけでした。
それでも名前を呼ぶと動かない体で必死になって私の許に来ようとするのです。
大丈夫。どこにも行かないよ。
小町に頬を寄せ、腕を回してあげる事しか私にできる事はありませんでした。
もう何もいらない。どんな事だってする。だから、小町を・・・・
泣き顔を見せたら小町が心配する、不安になる、と我慢しても涙は止まりませんでした。
小町には、私の喜怒哀楽がわかっているようでしたから、とにかく笑っていなきゃとがんばってはいたのですが。
日付が変わりしばらくすると友達から電話があり、友達には申し訳なかったけれど上の空で話を聞き、小町の頭や背中をなでていました。
短い電話が終わり、受話器を戻して小町に向き直ると何か様子が変でした。
お腹は上下に動いておらず、顔をのぞき込むと開いた目いっぱいに瞳孔が広がっていました。
私が小町から目を離したのは、ほんの少しの時間。
そのほんの少しの時間は、現在進行形からすべてを過去進行形に変えてしまった大きな時間でした。
ここで私と小町の時間は終わりました。
たった4,5ヶ月だったけれど、小町との時間は今でも私の中で愛しく柔らかく輝いています。
こうなってしまう事が避けられない事だったとしても、私はもっと早く真剣に気付くべきでした。
責任の半分は私にあるのだと思います。
感傷的になって自分を責めているのではなく、責められるべき事実だと思っています。
ごめんね ありがとう、という気持ちに終わりはないけれど、許してね、なんて都合のいい事は言いません。
私にできる事は小町との最後の約束を守る事だけです。
必ず小町を探すから
どんな事をしてでも小町を見つけるから、私がそっちに行くまでお友達と仲良く遊んでいてください。
だから・・・私の事、忘れないでね。
大好きな小町へ
PS その翌年の5月に捨てられっ子だった小春を連れて帰ったのは、ただの偶然なのかな?
*このページの仔猫は素材屋さんからお借りした物で、小町ではありません。
小町はアメショのハーフで、縞模様も薄く少ないキレイな子でした。
あの子もこんな風によく窓から外を見ていたものです。
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